1月17日過ぎメムアースホテルの大切な仲間であるコギンジが27歳9カ月で息を引き取りました。
私たちは愛するコギンジを失い、言葉では表現ができないような深い悲しみに包まれました。
1月18日、それでも朝はやってきて、私たちはコギンジの亡骸(なきがら)を土へと還さなければなりませんでした。スタッフ、仲間や家族、それぞれお互いを抱きしめ合い、コギンジを弔うためにみんなで力を合わせました。私たちの敷地には生涯を共に過ごした馬たちを埋葬するためのお墓があります(保健所へ申請し認定済み)。私たちの挑戦をいつも一緒に乗り越え、支え続けたコギンジは、最後まで凛々しく、そして生まれた土地で安らかに眠りにつきました。
コギンジの生い立ち
コギンジはメムアースホテルのある大樹町芽武で生まれ、その生涯を芽武で過ごしました。
1995年4月17日に父は多理王、母は武姫との間に生まれました。品種はリピッツアナー、芦毛(あしげ)の騸馬(せんば)。リピッツアナーは16世紀にオーストリアにて誕生し、戦火の中で苦難の歴史をたどりながらも生きながらえた馬。現在はオーストリア・ハンガリー・ルーマニア、チェコなどで生産されるも、希少種として扱われ、日本では純血種のリピッツアナーは数えるほどと言われています。強靭な肉体、高い知性と穏やかな気性を併せ持つ、馬の中でも特別な存在です。
馬たちを取り巻くもの
メムアースホテルでは、生き物との共生を実現するため、馬たちにたくさんのことを教えてもらっています。経済的な指標では計り知れない大切なことばかりです。これからの課題は私たち人間がそれをどう受け止めるか、ということ。
競走馬をはじめ乗用馬やポニーなど、品種によって差はありますが30歳ほどまで長く生きる馬たちが
その生涯をどのように暮らしているか、少し想像してみて欲しいのです。彼らが人を乗せて心身ともに健康に働けるのはいったい何歳までなのか。そして人間と同じように老いていき、満足に働けなくなったとしたら、その後はどうなるのでしょう。一生懸命に人のために働いた馬たちに待っている、見えないその先のこと。
メムアースホテルでは、馬たちが馬らしく最後まで幸せに暮らせる世界にするにはどうしたらいいのかを毎日真剣に考え、少しずつですが実践しています。歳をとった馬や乗用に適さない馬たちも、それぞれの得意なこと、その馬ごとの個性を活かして、何か一緒に取り組むことができないだろうかと試行錯誤の繰り返し。馬を取り巻くお金の流れの新しい仕組みを構築することで、馬も幸せ、人も幸せが実現できたらどんなに素晴らしいことでしょう。
馬たちが最後まで暮らせる仕組みについて
私たちが共に暮らす馬たちは、経済動物でもなく、家畜でもなく、共に全てを分かち合う私たちの家族であり仕事のパートナーです。馬が馬らしく、人が人らしく暮らせることを基本に、お互いの強みや個性を活かし、それぞれが幸福な生を全うするため、小さな取り組みからひとつずつ進めていこうと考えています。
たとえばコギンジは人と近い距離でコミュニケーションをとることが得意でしたので、直に馬と人の心を繋ぐ活動をお仕事としていました。その他、馬たちが最も得意とする草を食べることを通して、風景づくりや環境整備として森の手入れや敷地内の草刈りをしてもらい、化石燃料による環境負荷の軽減に貢献をすることもできます。また、自然に近い環境(アメリカ発祥の馬の遊歩道を参考にしたルートづくり、パドックパラダイスなどと呼ばれます)を整えることで、馬たち自らが生活の中で健康を促進し、医療費や人件費を削減して最後まで馬たちの力で元気に暮らす場所へと育てています。私たちがこの土地を馬と分かち合うことで、異なる生き物を受け入れること、受け入れてもらうこと、それを十勝のゆっくりとした時間の中で感じられる場所をみなさんと共有できたらと考えています。
コギンジの活躍。
コギンジの性格は、穏やかなのに慌てん坊。いつもみんなを優しさで包み込むような大きなハートの持ち主でした。私たちが新しいことに挑戦する時には、いつもコギンジと一緒でした。高齢であるにもかかわらず、学習能力が高く、いつも人との協働に意欲的に取り組んでくれました。大勢の人が集まる結婚式に新郎を背中に乗せての入場、雑誌の撮影や取材、お客様と放牧地での触れ合いなどなど数えきれない仕事に取り組んできました。コギンジと毎日を過ごし、ともに仕事をするたびに信頼関係が深まっていったその感覚を今でも恋しく思い出します。
コギンジが担当した広報活動をまとめてみました。
<コギンジ活躍>
eclat 2019年12月号
CASA BRUTUS 2018年9月号
HERS2019年12月号
Hanako2019年9月号
VOGUE2019年2月号
CREA Traveller2020年春号
SIGNATURE2019年8&9月号
FIGARO Japan2019年7月号
IMPRESSION 2020年12月
BRURTUS2019年12月
ジュエリーブランド”4℃”ヴィジュアル撮影
金井ご夫妻結婚式にて新郎を乗せて登場
※hanako記事内の乗馬は現在は休止。
以下のWEBマガジンにて掲載記事一部閲覧できます。
みなさんへの感謝の言葉
コギンジは最後までたくさんの人や動物に愛されました。たくさんの方が駆けつけてくださりお悔やみをいただき、いつも一緒に過ごしていた馬たちはコギンジを思い嘶き(いななき)ました。メムアースホテルにご宿泊頂きました皆様お一人お一人の心温まる思いが、この馬と共に暮らすホテルに力を与えてくれています。少ない頭数ではありますが、目の前の命と向き合い、毎日の幸せをみなさんとここで分かち合うことができましたら幸いです。心からの感謝を皆様に贈りたいと思います。そしてこれからの馬と私たちの成長も見守っていてください。
ステーブルマネージャー 山城裕子






